お役立ちコラム
3.162022
宗派による【お墓づくり】の作法の違い
前回は、「いろいろな宗教・宗派の種類」についてお話ししました。
では、たくさんの宗教や宗派が存在する日本において、お墓の形やつくり方に違いはあるのでしょうか?
今回は「宗教の違いとお墓の関係」や「宗派によるお墓の形の違い」についてお話します。
仏教は、宗派が違ってもお墓の形は同じ
仏教式のお墓は「三段墓」と言われ、墓石、上台、下台の三段で構成されています。
江戸時代以降、日本全国で普及した形で、今でも日本で“お墓”といえばこの形をイメージされる方が多いと思います。
仏教のこのお墓の形は、仏舎利塔・五輪塔を表現したもので、宗派によって色や形が違うことはありません。唯一宗派によって異なるポイントは「戒名や法号」など「お墓に刻む文字」なのです。戒名、法号とは、仏の弟子になった証として授かる仏名で、生前に信仰が厚かった人やお寺に貢献した人に与えられる物ですが、現在では亡くなってから授かることが多く、生前の名前を俗名、亡くなってからの名前を戒名・法号・法名を言います。
次に、主な宗派によるお墓の違い、戒名や法号の違いについて紹介します。
天台宗
天台宗のお墓の特徴は、墓石の「○○家之墓」の上部に梵字で「ア」という文字が刻まれることです。これはサンスクリット語で、「大日如来」を意味します。さらに、法華経由来の「南無阿弥陀仏」や「空、風、火、水、地」を表す梵字を刻んだりもします。
真言宗
真言宗のお墓も天台宗とほぼ変わらず、墓石の「○○家之墓」の上部に「ア」の梵字が刻まれます。その他「南無大師遍照金剛」や「空、風、火、水、地」を表す梵字を刻んだりもします。
浄土宗
浄土宗のお墓も、墓石の「○○家之墓」の上部に「ア」の梵字が刻まれ、本格的なお墓になると「南無阿弥陀仏」や「倶会一処」と刻まれることがあります。また、戒名の前に「誉」の文字を刻んだりする場合もあります。
浄土真宗
浄土真宗のお墓は「○○家先祖代々之墓」と正面に書き、「倶会一処」と刻むのが一般的なデザインとされていますが、戒名や法号など何を刻まなければいけないというルールは存在しません。なので最近では好きな経典の文言を刻んだりする方もいます。ただし、浄土真宗は浄土でまた生まれ変わる、ということを前提をしているので、この世とあの世を繋ぐものであるお墓には『五輪塔を立ててはならない』『観音像、地蔵、宝塔を立ててはならない』『法名碑には「法名」とだけ刻む』など細かいしきたりが多く存在します。
臨済宗・曹洞宗・禅宗
臨済宗や曹洞宗、禅宗のお墓は、「悟り・仏・完全」を表す円相(○の形をした文字)を墓石の一番上に刻みます。この丸い印を刻むことは、故人が成仏し仏に変わったことを表しています。
墓石の横には五輪塔が建てられ、「空、風、火、水、地」と刻まれるのが特徴です。本格的なお墓だと「南無釈迦牟尼仏」や「南無釈迦如来」と刻まれることもあります。
日蓮宗
日蓮宗のお墓は、墓石の正面に「南無妙法蓮華経」または「妙法」と刻みます。「○○家之墓」と刻む場合には、その下に刻みます。髭題目と呼ばれる、髭を長くのばしたような独特の書体で刻まれるのが特徴です。また、墓石の横に立てる五輪塔には「妙、法、蓮、華、経」と刻むのがルールとなっています。
神道方式のお墓
神道の場合も、仏教のお墓とほとんど変わりませんが、墓石の上部が勾配のある三角形になっていたり、お線香を焚かないため香炉がなかったりします。代わりにお供え物を置く八足台が存在し、お参りの際には玉串を捧げます。
また、墓石には「○○家之墓」の代わりに「○○家奥津城」と刻まれます。
キリスト教のお墓
キリスト教のお墓は、仏教や神道のお墓と全く違った形をしています。キリスト教は土葬が主流なので棺を埋めるための長方形のスペースが存在します。墓石は、十字架の形をしたものや、オルガン型、ストレート型など様々あります。そして、お墓は1人ひとつが原則なので、一つのお墓に家族で入るということはありません。墓石には本人の名前と生没年が刻まれるシンプルなものが標準となっていますが、洗礼名をもつ場合や聖書に好きな文言がある場合には英語で刻まれることもあります。日本では遺体は火葬することが原則なので、キリスト教のお墓を建てる場合は、遺体は火葬して墓石やろうそく台にのみキリスト教のデザインを用います。
近年流行っているデザイン墓
最近では、仏教や神道の和型墓石やキリスト教の洋墓墓石にとらわれない、自由なデザインのお墓もよく見かけるようになりました。これはデザイン墓と呼ばれ、無宗教の方を中心に好まれています。デザイン墓はその名の通り、好きな形や文言でお墓を建てることができるので、サッカーが好きなら、墓石をボールの形にすることもできますし、好きな歌詞や言葉、マーク、故人の思い入れのあるイラストを刻むことも可能です。無宗教の方の場合はお寺や教会が管理してくれるわけじゃないので、生前に家族とよく話し合っておくことが大切です。また、お寺で管理してもらうお墓にデザインを取り入れたいなどの場合は、お寺に事前によく相談することが大切です。
宗教や宗派が違っても納骨できるのか?
違う宗教や宗派でも納骨ができるかどうかは、墓地、墓苑、管理するお寺の判断となり、管理規約を確認する必要があります。寺院が管理している寺院墓地では、厳しい場合もありますが、公営、民営などの墓地、墓苑では宗派を問われてないことが多いです。近年では、檀家制度を設けていない寺院も増えてきており、宗派が違っても納骨できる可能性もあるので、相談してみるのが良いでしょう。
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次回は、〜宗教や宗派による供養の違い〜についてお話しします。